私が2006年から展開している「マインド・ゲームス」というアートワークは、基本的には白い絵の具と黒い絵の具を使ってオセロ・ペインティングを行っている。
一般的に認識されているオセロ・ゲームのイメージを作品に与えたかったことがその理由のひとつであるが、絵の具を重ねていく行為のなかで白と黒が混ざり合ってグレーになることも重要な理由だ。それは対極にいる者が主張しながらもいつしか互いの性質を取り入れて変化していくということを意味している。
さて今回は、ずいぶん鮮やかなターコイズブルーと明るいグレイッシュ・ピンクをオセロの盤面に用いている。
「H氏との対話」というプロジェクトを始めるにあたって京都のHRDファインアートのオフィスへ下見に行った。
H氏は御霊神社という古来の神社のそばに建つ町屋を借りてオフィスにしている。格子戸をはずすと大きな出窓が見事な存在感を表し、ここで私の作品を展示させていただけるという。
まずはイメージをつかむために建物全体と部分の写真を何枚か撮影し、窓の寸法をはかり、細かい打ち合わせをして私はふたたび自分のアトリエに戻った。
あらためてその写真を眺めていて目に留まったのは、町屋の渋いたたずまいのなかでアクセントのように据え付けられているターコイズ・ブルーのポストだった。
これはもともとあったものではなく、H氏がご自分で取り寄せて設置したものだと聞いた。
「マインドゲームス」の延長線上で展開するこの「対話」シリーズでは、白黒ではない「色」を使ってやってみようかという気があったので、今回そのポストの色を引用することにした。
対する色は・・・私のアトリエの砂壁を当てはめてみた。ターコイズブルーの補色に位置するレッドオレンジを薄めたような桜色のような色である。この2色が混ざり合うと明るいグレーになる。白黒のオセロの混色と同じ無彩色だ。
ペインティングをスタートさせてから約2週間がすぎたが、2色の絵の具は重なり混ざり合いながらアクリル板の上で不思議な色味とマチエールを持ち始めている。